添加剤による抵抗低減技術
抵抗低減技術の歴史は1949年、英国の研究者B.A.Tomsによって報告されています。
「希薄な石鹸またはポリマーが乱流エネルギーの低減に寄与する」というものでこの現象はToms(トムズ)効果とも呼ばれます。 後に界面活性剤でも抵抗低減を引き起こすということが分かってきました。
界面活性剤は、家庭の身の回りで多く利用されております。
数多くある界面活性剤の中から抵抗低減剤の主剤として最適なものを選択し、「配管抵抗低減剤LSP-01」を製品化しました。
日本でも近年、この技術に関しての研究が各方面での研究がされておりますが、抵抗を減少する技術の呼び名は、統一されておりません。
専門家の中では、抗力減少効果 ‘ DragReduction’ 「DR効果」と呼ばれることが多いようです。
界面活性剤とミセル
界面活性剤を水溶液にすると、水となじみやすい部分の親水基と水となじみにくい部分の疎水基の部分に分かれます。界面活性剤を規則的に並んだ集合体ができます。これを「ミセル」と言います。
また、「対イオン剤」を添加すると「棒状ミセル」を形成し、配管抵抗低減効果があると言われています。
抗力減少
「流体摩擦係数をブラシウスの式よりも下方にもってくる効果」を抵抗低減効果、あるいは抗力減少効果、また、抵抗減少効果と呼びます。
粘弾性
界面活性剤の抵抗低減剤は粘弾性流体とも呼ばれています。
LSP-01溶液では、回転を与えても粘弾性 溶液のため、渦の発生が起きにくいという現象があります。
グリーン・サステイナブル ケミストリー賞・環境大臣賞を受賞
『配管抵抗低減剤を用いた省エネルギー技術の開発と普及』
第8回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞環境大臣賞
GSCN News Letter No.31
大学発ベンチャー功労賞 受賞
『水循環設備の輸送エネルギーを20~50%低減できる配管抵抗低減剤の開発とその普及』
配管抵抗低減技術 Drag Reduction
流体輸送において、流体に希薄な高分子を添加すると、流れの抵抗がニュートン流体と比べて激減する現象は1948年に初めて報告されました。このいわゆる「抵抗低減効果」はその発見者の名前から「トムズ効果」と呼ばれています。この技術を応用すれば、流体を輸送するためのエネルギーを低減できる(省エネルギー)と考えられ、 1979年に原油のパイプライン(Trans Alaska Pipeline)でフィールドテストが行われたことは良く知られています。
化学合成技術も飛躍的に発達し、現在、アメリカの原油の40%以上は抵抗低減効果を得るための高分子添加剤が入っていると言われています。
一方、効果の発現メカニズムについては、未だ十分に解明されているとは言えませんが、添加された高分子糸が流体中の渦の発生や運動を制御する、というような説明が妥当なところでしょう。
一方、ある種の界面活性剤も同様の現象を示すことが、トムズの報告の20年後にネイチャー(1956年) と J.Colloid Science(1958年) に紹介されました。
正確には、Nashの論文ではカチオン系界面活性剤(CTAB)とサリチル酸誘導体によって粘弾性のあるゲルが生成されたことのみが報告されており、さらに 10年後に同じネーチャーに掲載されたGaddの論文で、CTABとサリチル酸の混合物が抗力減少効果を示したことが初めて報告されました。
界面活性剤による抵抗低減効果は、流体中で界面活性剤と対イオンが棒状のミセル構造を形成し、これが乱流構造の制御に寄与するものと考えられます。
高分子と比べ、せん断力による構造破壊を受けても、再度構造を復元できることから、循環系への応用が期待され、これまで研究が進められてきました。
界面活性剤による抵抗低減効果の実用化については、デンマーク(エネルギー省が実施)、チャコ(オハイオ州立大学が実施)、ドイツ(ドルトムント大学が実施)の例があるものの、いずれも実証試験で終わっており、稼働状態のものはありません。
これに対し、我が国の実機導入件数は世界トップであり、国内の実施例は約140件あります。
(2012年3月現在)。このうち、約9割はエルエスピー協同組合、(財)周南地域地場産業振興センター、山口大学工学部(当研究室)の産学公共同研究として進めてきたものです。
共同研究において実使用に耐える抵抗低減剤を開発し、防錆効果も兼ね備えた「配管抵抗低減剤LSP-01」を商品化しています。
なめらかな流れで省エネルギー
独立行政法人産業技術総合研究所
サイエンス・スクエアつくばに展示
日本レオロジー学会技術賞 受賞
『抵抗低減効果による流体輸送の省エネルギー技術の開発と普及』